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日本書籍出版協会・国際ISBN機関に登録されている出版社P.P.Content Corp.は、日本の詩人千慶烏子の書籍を出版・販売しています。デモ版を読んだり、AmazonやAppleなどのオンラインストアで電子書籍を購入したり、オリジナル作品をダウンロードしてコンピュータでご覧いただいたりすることができます。P.P.Content Corp.は、いつでも、どこでも、どのようなデバイスでも書物を読むことができる全く新しい文学の愉しみをご提供しています。

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千慶烏子の本はAmazon Kindleストアをはじめ、Apple Booksストア、Google Playブックストアなど5つのブックストアでご購入いただけます。下のストアアイコンを押すと各ストアの商品ページがご覧いただけます。商品ページでは、詳細な解説やデモをご覧いただくことができます。ぜひ一度、本の売場にお越しください。

千慶烏子『やや あって ひばりのうた』

やや あって ひばりのうた

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-03-9, 978-4-908810-10-7

あなたは妹の黒い靴下をはき、わたしはお兄さまの革のベルトをしめて、おたがいの胸乳をおのおのの口に吸い合うのです。あなたは妹の黒いリボンをつけ、わたしはお兄さまの黒い靴紐をしめて、おのおのの口に青い鱒をつりあげるのです。水しぶきをあげて勃起している青い魚をおたがいの口にさがしあてては、それをおのおのの口に吸い合うのです。そうしてあなたはわたしの野良猫のようにまるいおなかに、そうしてわたしはお兄さまの牝猫のようにきれいなおしりに、杜撰な虚言を突き立てあってはおたがいの青い鱒をおのおのの口に吸い合うのです…(本文より)

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千慶烏子『ポエデコ』

ポエデコ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-05-3, 978-4-908810-27-5

自転車を押しながら坂道を登ってゆく彼女を見つけてマリと叫んだ。僕たちの夏の始まりだった。僕たちはその夏一緒に過ごそうと約束していた。誰にも内緒で、自転車を走らせ、一晩でいいから湖のほとりのコテージで一緒に過ごそうと二人だけの約束をしていたのだった。僕は彼女を見つけて名前を叫んだ。半袖のブラウスからのぞく肌という肌のすべてが美しく、額に結んだ粒のような汗までが美しかった。僕たちは夏の盛りの泡立つような虫の声に煽られながら、乾いた唇に唇を重ね、早熟な愛の感情におたがいの肌を寄り添わせるのだった。峠を越えると右手に湖を望んで下り坂を…(本文より)

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千慶烏子『アデル』

アデル

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-28-2, 978-4-908810-02-2

海辺にひびく鳥の声を美しいと思った。頬を撫でて行き過ぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。もう二度とパリに戻ることはないかもしれないというわたしたち家族の深い絶望の色で、瞳に映るものすべては暗く沈んでおり、また、夜ともなればいつも父を苦しめる亡姉レオポルディーヌの痛ましい記憶にわたしたち家族の思い出は逃れようもなく囚われており、わたしたちは、パリを遠く離れた小さな島の小さな街で息をひそめるように深い喪のただなかにいた。しかし、海辺にひびく海鳥の声を美しいとわたしは思った。頬を撫でて行きすぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。この肌にふれる海のひびきが…(本文より)

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千慶烏子『クレール』

クレール

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-06-0, 978-4-908810-08-4

思えば、あの日はじめてサーカスの馬屋で見た中国男がわたしに微笑みかけることをせず、罌粟の咲き乱れる裏庭の片すみで、弦が一本しかない中国のセロを弾いてわたしたち家族を感嘆させることもなく、柔らかいなめし革のような肌を輝かせてわたしの手にうやうやしく接吻することもなく、そのまま馬に乗ってこの小さな村から出て行ってくれたのなら、どれほどよかったことだろうか。葡萄摘みの女たちがまだ早い新芽をいらって夏の収穫に思いをはせるころ、時おり吹く風に初夏の緑が柔らかな若葉をめぐらせるころ、はるか西の果てに海洋を望むアキテーヌの領地に幌を寄せ、どこか物悲しいロマの男たちの奏でる音楽に合わせて…(本文より)

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千慶烏子『TADAÇA』

TADAÇA

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-18-3, 978-4-908810-32-9

あなたはその女(ひと)の胸を吸う。その女の胸のあわいなでしこの蕊をあなたは吸う。その女の腋のすこしばかり湿った暗さをあなたは吸う。愛しい女の肌もあらわなその場所に触れつつ暮れる夏の日のあまいかげりをあなたは吸う。ときどき吹きみだれるその女の髪があなたのほほをかすめることもなく、ときどき耳朶にぬれるその女の髪があなたの指をこばむこともなく、ひだりにむけ、そびらをかえし、あなたのそこに、その口もとに、またその耳もとに、その女の息を散らすあなたがたの夏の臥床にあなたは吸う。みずみずしくひもとかれたその女の肌のしずかなうるおいがあなたのうなじにめぐらされ、もうとうにはだかであることにも飽いたその女の脚が…(本文より)

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千慶烏子『デルタ』

デルタ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-26-8, 978-4-908810-04-6

この海に終わりがあることをわたしは知っている。でも言わない。あの空に限りがあることをわたしは知っている。でも言わない。夕映えにかすむ希薄な空を染めて遠く沖合いに沈もうとするわたしたちヘスペリアの太陽は、本当は太陽ではなく、太陽の廃墟だということをわたしは知っている。でも言わない。言わないのは禁じられているからではなくて、誰もわたしに聞こうとしないから。訊いてくれたら話してあげるかもしれないけれども、誰もわたしに聞こうとしないから。永い永い航海の果て、弔いの歌もなく死んでいった男たちのことをわたしは言わない。もはや忘れられて久しい故郷の歌と残された子供たちの旅路の行方をわたしは言わない…(本文より)

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千慶烏子『冒険者たち』

冒険者たち

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-17-6, 978-4-908810-23-7

事の起こりはこうだ。ある晴れた日の朝、君はどうしようもない不安と焦燥に駆られて、あてどもなく医師の門を叩く。いくつもの関門を潜り抜け、受付の前に受付があり、受付の中にも受付があり、また受付の後にも受付が続くような不可解な構造をした待合室でさんざん待たされたあげく、ようやく診察室に招き入れられると、君はこう告げられるのだ、癌ですってね。ここで君の人生の設計図は大きく狂う。望むと望まざるとにかかわらず、僕たちは突如として冒険に駆り出されるのだ。朝の日差しに美しく輝く流線型のポップアップトースターからこんがり焼けたトーストが吐き出されるところをじっと眺めている君が、エスプレッソをダブルで頼んで鞄を片手にエレベーターの点滅する数字をじっと眺めている君が…(本文より)

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千慶烏子『ねじふりこ』

ねじふりこ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-30-5, 978-4-908810-15-2

挿画の森にたたまれた首の長い佝僂の花嫁。鳥の半身をもってときどき嬌々とさえずる彼女のくるぶしは、いったい何とひきかえに失われてしまったのだろう。まるい下腹、ゆたかな乳房、そのやや暈のひろいふぞろいな臆見にしくまれた青空のふりこは、いったいいつまで退屈な時を刻み、忘れられた俗謡を彼女にうたわせるのだろう。「たくらまざる世界の乳房」、「たくらまざる天国の果実」、「蜂と蜜蜂たちにささげられる蜜月の賜物」。南を指して錆びついた雄鳥のジャックが、使い古された卑俗な俚言をたくみに弄して彼女に言い寄った昨日の、夏の晩景の暮れなずむ蔵書の叢林を、少年はいったい誰に内緒で見たのだろうか、印度更紗の色褪せた捺染のかたわらで…(本文より)

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DEMO

千慶烏子の作品を読んでみましょう。各ストアの商品ページには、試読用のデモと詳細な解説が用意されています。センクエイコムでもこれらのテキストをご覧いただくことができます。作品の解説を読むにはトップメニューから「NOTE」を、デモを読むには「DEMO」を押します。下の作品画像を押すとデモの続きを読むことができます。

千慶烏子『ポエデコ』

ポエデコ

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-05-3, 978-4-908810-27-5

自転車を押しながら坂道を登ってゆく彼女を見つけてマリと叫んだ。僕たちの夏の始まりだった。僕たちはその夏一緒に過ごそうと約束していた。誰にも内緒で、自転車を走らせ、一晩でいいから湖のほとりのコテージで一緒に過ごそうと二人だけの約束をしていたのだった。僕は彼女を見つけて名前を叫んだ。半袖のブラウスからのぞく肌という肌のすべてが美しく、額に結んだ粒のような汗までが美しかった。僕たちは夏の盛りの泡立つような虫の声に煽られながら、乾いた唇に唇を重ね、早熟な愛の感情におたがいの肌を寄り添わせるのだった。峠を越えると右手に湖を望んで下り坂を走った。コテージでは最初はどこかためらいがちだったけれど、抱き合う以外に愛を伝える方法を知らない僕たちは、湖畔の美しい光景を見ることすら忘れて、暗い部屋のなかで早すぎる愛の吐息に溺れるのだった。時にはいつか撮る映画の話をして、まだ手に触れたことすらないカメラを構える格好をして彼女の初々しい裸体を眺めるのだった。ただただ愛を交わすそのことだけが僕たちの夏の営みだった。一夜が二夜になり、二夜が三夜になった。そして、空模様が夏の終わりを告げて慌ただしく暮れ始めようとするころ、あたかもカメラのなかの感じやすい物質が光に触れて美しい痕跡を宿したように、僕たちは早すぎる愛の痕跡を宿して…

千慶烏子『クレール』

クレール

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-06-0, 978-4-908810-08-4

思えば、あの日はじめてサーカスの馬屋で見た中国男がわたしに微笑みかけることをせず、罌粟の咲き乱れる裏庭の片すみで、弦が一本しかない中国のセロを弾いてわたしたち家族を感嘆させることもなく、柔らかいなめし革のような肌を輝かせてわたしの手にうやうやしく接吻することもなく、そのまま馬に乗ってこの小さな村から出て行ってくれたのなら、どれほどよかったことだろうか。葡萄摘みの女たちがまだ早い新芽をいらって夏の収穫に思いをはせるころ、時おり吹く風に初夏の緑が柔らかな若葉をめぐらせるころ、はるか西の果てに海洋を望むアキテーヌの領地に幌を寄せ、どこか物悲しいロマの男たちの奏でる音楽に合わせて、美しく化粧をしたブランコ乗りの娘が目の前をあわただしく行き過ぎるたび、わたしはあの男の長い髪を思った。ナイフ投げの男が観客の鼓動を高鳴らせ、松明を手にした男たちが高々と火を吹いて夕空に火柱をあげるたび、わたしはあの男の焼けた肌を思った。そして、不思議なセロを手にしたあの男が、金色の髪をなびかせて雄叫びをあげる獰猛な獣に歩み寄り、鞭をふるうでもなく、怒声をあげるでもなく、誰もまだ聞いたことがないような抒情的な音楽を奏でて、この猛り狂う百獣の王を眠らせたとき、なぜかしらわたしは、永い眠りから覚めたのだと思った…

千慶烏子『アデル』

アデル

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-28-2, 978-4-908810-02-2

海辺にひびく鳥の声を美しいと思った。頬を撫でて行き過ぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。もう二度とパリに戻ることはないかもしれないというわたしたち家族の深い絶望の色で、瞳に映るものすべては暗く沈んでおり、また、夜ともなればいつも父を苦しめる亡姉レオポルディーヌの痛ましい記憶にわたしたち家族の思い出は逃れようもなく囚われており、わたしたちは、パリを遠く離れた小さな島の小さな街で息をひそめるように深い喪のただなかにいた。しかし、海辺にひびく海鳥の声を美しいとわたしは思った。頬を撫でて行きすぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。この肌にふれる海のひびきが鼓動を高鳴らせるとわたしは思った。そして、ここ、ガンジーの浜辺でエニシダを挿した食卓の花瓶や静かに揺れるお父さまの椅子、その背もたれの縁に手を差し伸べて優しく微笑むお母さまの美しい横顔、もはや年老いて耳の遠くなったばあやがわたしを気づかって差し出してくれる洋梨のデセール、そのように取り止めもなくわたしの瞳に映るもののすべてが、海辺にせまる夕暮れの深い静寂のなかで、もはや決して繰り返されることはないであろう一刻一刻の美しい輝きをおびてわたしの眼の前に立ち現われたその瞬間、わたしは恋に落ちていることを確信しました…

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